水面のきらめきに囚われて
三葉虫たちは、海底の静けさのなかで生きていた。
目は、ただの器官だった。
世界を知るためのものではなく、闇に慣れるためのものだった。
ある日、水面に映る光のきらめきが、彼らの目に届いた。
日差しが、波に揺れて金の線となり、
月が、静かに輪郭を描き、
星が、水の上で瞬いた。
彼らは、それが何かを知らなかった。
でも、感じた。
胸の奥が震えるような、理由のない歓び。
その光は、触れられない。掴めない。
でも、確かにそこにあった。
彼らは、そのきらめきを追い始めた。
目は変わった。
より広く、より繊細に、光を捉えるための器官へと変化した。
それは進化ではなかった。
それは、美しさに触れてしまった者の運命だった。
彼らは、光の方へと動いた。
日差しを、月を、星を、
水面越しに見つめ続けた。
やがて、その光が消えた日——
空が閉じ、海が濁り、
世界が暗くなった日——
彼らは、生きることができなくなった。
なぜなら、見ることが、生きるすべてだったから。
光を失った目は、ただの器官に戻ることはできなかった。
それは、歓びを知ってしまった目の、静かな死だった。
光はもう届かなかった。
それでも、感覚の奥で、きらめきは消えなかった。